【魔女の再来に震撼せよ】フェミニストの象徴

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シャンゼリゼにはこの冬、赤いイルミネーションが灯り、駅やデパート、街中のブティックやショーウインドウにもクリスマスツリーがお目見えする季節になりました。

その昔、「罪のない女性たちが(実際は男性も多くいた)魔女裁判にかけられて、公衆の目の前で火炙りの刑に処された」という恐ろしい話を聞いたことはありませんか。

現代の魔女はフェミニストで、政治的で、ジェンダー研究に深く関わり合いのある存在です。

かつて忌み嫌われていた「魔女たち」はいったい何故、どうのようにしてフェミニストへと進化したのでしょうか…?

本記事では米国とフランスの「フェミニストと魔女」についてご紹介します。

スペインの画家ジョアンミロが描いた魔女(1969)
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【魔女の再来に震撼せよ】フェミニストの象徴

ルネッサンス期のヨーロッパでは、かつて数万人の女性たちが『魔女』として処刑された。1970年代のフェミニストは、時に政治的アプローチに自然界のスピリチュアルな慣習を交えて、自分たちを魔女であると主張した。今日、人類にとって最も大切な「環境と人類」の関係に混乱が生じる中で、再び魔女が欧州を徘徊している。 

ドナルド・トランプが2017年1月に大統領に就任して以来、毎月数千人の魔女たちが下弦の月のもとで力を合わせて、大統領に呪いをかけている。 

※下弦の月(逆三日月)の間、満月から新月への期間中は『消滅、追い払い、破壊、逆転、拒絶、敗北、処罰』を目的とした魔術にふさわしいのだとか…。

ニューヨークにあるトランプタワーの麓では、そのような魔女たちの姿をとらえることができる。別の魔女たちはまた、自宅の祭壇の前で#BindTrump #MagicResistance等のハッシュタグを付けて、ソーシャルネットワーク上で投稿を拡散している。 

呪いに必要な材料は、

  • タロットカードの四大元素を構成する火・水・地(土)・風(空気)を象徴する物
  • トランプ氏の写りの悪いポートレート
  • オレンジ色のキャンドル。

アメリカの複数の州で同時に現れたのは、黒い服を着て尖った帽子をかぶり、マスクをして抗議活動をする『ウイッチ』(魔女)と呼ばれる団体で、彼女たちは社会正義のために「警察官により殺傷された市民」や「政府の移民政策」と戦い、「トランスジェンダーの権利」、「中絶する権利」を主張して活動を行っている。

※militer 活動する 闘う
※les droits des trans トランスジェンダーの権利

2017年9月7日インスタグラムの投稿によると、オレゴン州ポートランドの垂れ幕が《アメリカの狂信者たちは17世紀から女性の権利を十字架にはりつけて晒し者にしている》と避難した。

フランスでも魔女のことが取り上げられている。

パリとトゥールーズでは2017年9月、労働法改正を違法であるとして、フェミニストとアナーキストが構成する団体『Witch Bloc (魔女のブロック)』が『MACRON AU CHAUDRON !(大釜の中のマクロン)』と書かれた垂れ幕を手にデモ行進をした。

また、イザベル・コンブラキ(Isabelle Cambourakis)は2015年、自身の家族の出版社から『魔女 (Sorcières)』と名付けたフェミニスト全集を発表した。

※baptiser 名付ける  

その中には、ドキュメンタリー映画『私の姉妹、魔女』(2010年)を撮った映画監督カミユ・デュソリエ著『占いフェミニズムの実践ガイド』も収められている。

30代の作家ジャック・パーカー(本名タウース・メラッキ)は、2017年から18年にかけて配信したニュースレター『ウイッチ、プリーズ(Witch, please) 』の中で、魔術の実践を静かに主張した。

米国同様にフランスでもまた、インスタグラム上では魔女のビジュアルをモチーフにした投稿#WitchesOfInstagramが拡散されている。

2018年10月 モナ・ショレ 
『ルモンド•ディプロマティック』2018年10月号フランス語版『魔女とフェミニスト』から抜粋して翻訳

魔女のルーツと語源【witch】

英語で魔女は《witch》と言いますが、この言葉はヨーロッパ・中東・その他の地域で生まれたキリスト教以前の伝統を継承し、地球への崇拝を求める異教の宗教信奉者のこと。

そしてこの《witch》という言葉の語源は、「屈曲させる」、「歪める」という意味をもつ古英語の《wik》から来ています。

なるほど、物事を歪めてしまう力を持つことから転じて、魔女は《ウイッチ》(witch)と呼ばれるようになり、自然を操る異教徒として恐れられていたのですね。

現代魔女とフェミニズム【1970年代フェミニズム運動】

ここ数年来、話題にはことかかない「魔女」たちですか、現代の魔女はフェミニストで、政治的で、ジェンダー研究にも関わり合いのある存在です。

かつて、人々から忌み嫌われ罪のない女性たちが(男性も多くいたらしい)魔女裁判にかけられて、公衆の目の前で火炙りの刑に処されていた恐ろしい時代がありました。

魔女たちは、何故、いったいどうやってこのような進化を遂げたのでしょうか…?

魔女の姿がポジティブなイメージを持つようになったのは、1862年パリで出版されたジュール・ミシュレ(Jules Michelet)の「魔女」(La Sourciere) の影響であり、また、それを引き継いで研究した1970年代フェミニズム運動のおかげであると言えます。

ジェンダー研究の分野にはなんと《ウィッチスタディーズ》なるものまでが存在し、1970年代には《魔女》をよりどころとする様々なフェミニスト運動がありました。 

また、日本ではジュール・ミシュレ(Jules Michelet)の「魔女」(La Sourciere) のストーリーを元に制作された美しい大人のアニメ『BELLADONNA 哀しみのベラドンナ』(Belladonna of sadness)が公開されました。

この作品は、アニメらしく無い芸術性と、美しく描かれたエロティシズムが、海外でも今尚高く評価されています。

フランスでは、1975年にザビエル・ゴーティエ (Xaviere Gauthier)が、女性の闘争にフォーカスした芸術・文芸雑誌『ソルシエール(魔女)』を創刊、1982年まで出版を続けました。

そこで語られた魔女とは、反抗的で、クリエイティブで、政治的で、家父長制と闘う女性のことでした。 

 米国では、作家でウィッカ、エコフェミニストの活動家スターホーク(Starhawk)が、「魔術によってエコロジー運動と反資本主義運動を結び付ける儀式」を提案。

スターホークの著作は、本記事でも取り上げたイザベル・コンブラキの人文科学全集『魔女』に掲載されました。

12歳でフェミニストになった【Niki de SAINT PHALLE】

私の好きな女性アーティスト、ニキドサンファル(Niki de SAINT PHALLE)は『12歳でフェミニストになった』と後のインタビューで答えています。その理由を「息苦しくてプライバシーの無い家の中で自分の母親のような主婦にはなりたくなかったから」と。

ニキドサンファルの最初の夫、作家で幼なじみのハリーマシューズ(Harry MATTHEWS)は、ニキと共に家事に参加しました。

また、フェミニスト作家で『性の政治学』の著者ケイト・ミレット、映画監督ア二エス・ヴァルダ、女優ジェーン・フォンダから、当時のフェミニズム運動へ加わるように頼まれたニキドサンファルは、その必要性を感じなかったと言います。

何故なら、彼女は「自分の作品そのものにフェミニストの価値観が宿っている」と評価していたのです。

最後に

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ニキドサンファルの作品は、記念碑として今でも人々の心を魅了し続けていますが、彼女が内に秘めていた狂気は女性特有のものであり、ニキドサンファルの作品のコンセプト『ナナ』は、女性の持つ狂気と狂乱の結晶そのものでした。

パリは現在、明日予定されているジレ・ジョーヌ(黄色いベスト運動)のデモの事で持ちきりです。デモは激しい暴力を伴う可能性もあり、明日は一日中外出できそうにありません。しかし、これは歴史的な革命を起こして民衆の運命を変えた過去を持つフランスにとって、伝統行事と言えるのかもしれません。

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