【黄色いベスト】すべてが表面化する時【フランスの暴動】

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今年に入り既に雪が2、3回降り冷たい雨が続きましたが、去年の11月から始まった大規模な抗議デモ「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」、12週目を迎える今日は « gueules cassées » (破壊されたツラ)に捧げられる黄色いベスト運動第12弾 として、”負傷者へのオマージュ”と”警察の暴力”の告発にフォーカスされます。
※gueule スラングで顔、ツラ、外見、格好
※Les gueules cassées(破壊された/つぶれたツラ)  第一次大戦のときにドイツとの戦闘で爆弾を受けて,見るに耐え難い顔になった兵士。形の悪い野菜などに対して使われる事が多い。
 

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【黄色いベスト】すべてが表面化する時【フランスの暴動】

ホロフェルネスの首を斬るユディト カラヴァッジォ 1600年
ホロフェルネスの首を斬るユディト
カラヴァッジォ 1600年

黄色いベスト運動では自分を過信し過ぎた権力者が、ヨーロッパの規範になるべく、それまであまり大きな動員のなかった社会集団の反乱に屈服せざるを得なくなった。 1か月で交通、課税、環境、教育、議会制民主主義が見直された。
2019年1月 セルジュ・アリミ

2018年12月15日、パリのオペラ広場で3人の「黄色いベスト」の抗議者が「フランス国民と共和国大統領エマニュエル・マクロンへの声明」を読みあげた。本文は直ちにこう宣言する。「この運動は誰のものでもない。 これは、40年間、未来とその偉大さを信じる為の全てを奪われた民衆の表現である。   燃料税に触発された怒りは、1ヵ月もしないうちに、社会と民主主義を苦しめている現状について普遍的な診断を導いた。
※démocratie représentative 議会制民主主義
※taxe sur les carburants 燃料税   

ほぼ組織化されていない民衆が集結したこの運動は、加速的に政治化した。40年間にわたり政府に君臨してきた二党を一掃したと豪語する男を大統領に選んだ一年半後、「国民」は自分たちの未来が奪われたことに気付いた。  

そして、口火が切られた。かつての同業の奇才たち、ローラン・ファビウス、アントニー・ブレア、マッテオ・レンツィ(Laurent Fabius、Anthony Blair、Matteo Renzi etc.)らもまた若く、にこやかで、モダンだった。   リベラルなブルジョアにとって失望は計り知れない。 2017年に行われた奇跡のような大統領選挙は、フランスが問題を抱えた欧州の、幸せな島になったという希望を彼らに与えた。

マクロン氏が「歓喜の歌(ベートーベン)」をバックに就任を迎えた当時、支配階級の感情を見事に代表したイギリスの週刊誌The Economistは、輝くスーツに身を包み、唇に微笑みを浮かべて水の上を歩くキリストのようなマクロンの姿を表紙に起用した。

しかし海は、神童マクロンを飲み込んだ。彼は自分の直感を過信し、他者の経済的苦境をばかにし過ぎた。選挙運動の間、社会的苦悩は、一般的に間違った投票をする人々の候補者選びを理由付けただけだった。(…)  


以上、ルモンド・ディプロマティック 1月号一面記事の冒頭を翻訳してみましたが、1)積年の怒りに導かれたフランス庶民による黄色いベスト運動の急速な政治化、2)ブルジョア市民たちによるマクロン大統領への失望、3)貧しい人々のことを馬鹿にしたマクロン大統領の敗北などが語られていました。では、実際の所はどうでしょうか。

先週の土曜日には全国で6万9000人が黄色いベスト運動に参加

年が明けて1月5日、8回目の黄色いベスト運動は全国で5万人を動員し、「マクロン辞任」と「市民主導の国民投票(RIC)」という要求が掲げられました。

12日の土曜日には9回目となる抗議運動が行われ、全国で8万4000人が参加。10回目の土曜日19日にも全国で8万4000人が動員、パリでは約7000人が黄色いベスト運動に参加しました。


黄色いベスト運動参加者数の推移
仏内務省調べ
そして11回目となった先週の土曜日には全国で6万9000人を動員。12月8日の動員数12万6000人と比べると大分落ち着いたように見えますが、ソーシャルメディアなどを通じて集まったジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)の結束力は固く、勢いが衰える様子はありませんでした。

「黄色いベスト」が国民投票 (RIC)を要求

黄色いベスト抗議者が市民主導の国民投票(RIC)を要求。4つの国民投票をジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)が提案しました。

その4つとは、1)立法府が市民に直接法案作成を委ねて国民投票で採択。2)問題のある政治家を国民投票で役職から罷免。3)問題のある法律を国民投票で廃止。4)国民投票で憲法を改正。というもので、政治的決定に国民が参加する直接民主制の導入です。これにより、フランス市民が新しい法律をつくったり、問題のある法律を廃止したり、政治家の辞任を求めたりする事が出来るようになります。
※referendum d’initiative citoyenne (RIC) 国民投票
※citoyens francais フランス市民 


このような提案がされたのは、国民の代表という立場に立つはずの国会が富裕層の利益だけを代表していると感じる人が多いからで、世論調査では80%のフランス国民がRICを支持しています。

「黄色いベスト」 と警察の暴力

先週の土曜日、ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)の中でもリーダー格の1人、現時点でFacebookのフォロワー数6万5000人を超えるジェローム・ロドリゲス氏がバスティーユ広場にてFacebookでライブ動画を生配信していた所、突然警察の襲撃に遭い目に重傷を負いました。本人によると襲撃は2回あり、手榴弾とフラッシュボール(ゴム弾)で撃たれたのではないかとインタビューに答えています。

ライブ動画を撮りながら歩いていたジェローム氏の映像には、「17時なったらリパブリック広場へ」と仲間に声をかけたり、サリュー!サバ?等と挨拶をしながら歩いてバスティーユ広場の中心まで着き雑談していた所、突然前方を走って逃げる人々や、武装した警察官の群が現れ、爆発音と共に火花が散り画面が反転、数十秒後、道に倒れて目から血を流すジェローム氏の姿が映っていました。

この映像は瞬く間に8万人以上からシェアされてフランス警察の暴力を告発、ジェローム氏を支持する投稿がSNS上で拡散されています。

抗議運動が始まった11月から既にフランス全国で14名が死亡、警察が投げた手榴弾などで手を失った人が4名、失明者も報告されています。このような活動が行われているのは毎週土曜日のみで、平日は日常生活に支障をきたすような事はありません。が、止むを得ず衝突に遭遇した場合は、どうぞ身の安全にお気をつけ下さい。

 
1940年代からマクロン政権まで、各時代の政治経済の歩みについて客観的に述べられているフランス現代史の最新書をいちど読んでおくと、定期的に暴動が起こるフランスの事が少し理解出来るようになるかもしれません。

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