【大西洋の挑発】ニースのテロとNATOの首脳会議

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一度は寒くなったパリの夏でしたがこの2週間ほど再び真夏の太陽が顔を出しました。
9月に入り少しずつ暑さも落ち着いてきたようです。

今年7月9日、ポーランドの首都ワルシャワで冷戦終結以降で最も大きな北大西洋条約機構NATOの首脳会議が開かれました。

首脳会議の初日、ロシアを抑止するため東欧(ポーランドとバルト三国)に4000人の多国籍部隊を派遣することが発表されました。

もちろんフランスも、この派兵に貢献することになります。

今日は、ルモンド・ディプロマティック8月号の一面記事から【大西洋の挑発】を、私なりの翻訳と解説を交えてお伝えします。

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【大西洋の挑発】セルジュ・アリミ 2016年8月

ヨーロッパの大西洋同盟諸国の指導者たちは、欧州連合(EU)議長を務めた後にゴールドマン・サックスのロビイストになったジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長の真似をしたかったのだろうか?

セルジュ・アリミ 2016年8月

米大手銀行の多くは、英国に中心拠点を置き「パスポート制度」を活用して欧州全般で事業を展開しています。

中でもゴールドマン・サックスは2004年から2014年まで、10年間欧州委員長を務めたジョゼ・マヌエル・バローゾ氏を、海外事業のアドバイザー兼非常勤会長に迎え入ました。俗に言う「天下り」です。

英国のEU離脱が決定したことで、こうしたビジネスモデルの先行きに不透明感が広がる中、ゴールドマン・サックス側は「ユーロ圏債務危機」への対応で手腕を発揮したバローゾ氏を起用して難局を乗り切りたいという。

これに対し、パリのデジール欧州問題担当相は、バローゾ氏がゴ-ルドマンで職につくことは、欧州連合(EU)の利益相反規定にそぐわない「恥ずべき」行為だと述べて「欧州委員長は民間の利益の圧力を受けない立場にあるべき」との考えを示しました。

フランス政府は7月13日バローゾ氏に対し、ゴールドマン・サックスでの幹部職への就任を断念するよう求めています。 

結局彼らは退職後の生活を、米国企業の軍事コンサルタントとして準備するために、NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議を利用しているのだろうか?

確かに不条理ではあるが 、最終的にこのような仮説は7月にワルシャワで行われた会議で下された決定に比べれば別段恐ろしくはないと願いたい。

(その会議では)ポーランドとバルト三国の一つに4000人の多国籍部隊を派遣することが決定されたのだ。 

セルジュ・アリミ 2016年8月

多国籍部隊が配備されるのは、バルト海のロシア艦隊司令部と、サンクトペテルブルグからの砲射撃が到達する範囲。 多国籍部隊で中心的な役割を果たすのは、米英独カナダで、ルーマニアにも同様の部隊を配置する方針です。

ロシアのコサチョフ国際問題委員長は、これについて「存在しない危険に備え、まるで砂漠にダムを築くようだ」と非難しましたが、NATO側は、「加盟国が1カ国でも攻撃を受ければNATO全体への攻撃」とみなし、「必要がある限り(多国籍部隊の配備を)続ける」と主張しています。

7月の会議では難民問題にもふれて、アラブ・アフリカ圏から欧州入りする難民への対応として、密航業者の摘発や情報共有を強化することも強調しているため、NATOは今後、活動地域をエーゲ海から北アフリカ・リビア近海の地中海まで広げるだろうと予測。

1955年5月、ソ連の庇護の下でワルシャワ条約が調印されたその場所で、冷戦から継承されているNATOという構造体が出会う時点で、ロシアの指導者たちの恨みを想像することができる。NATOもまた、ソ連と共に消えるべきだったのだ。さらに悪いことに、NATOの新たな欧州連合軍最高司令官であるカーティス・スカパロティは、“平和と挑発と紛争”の間ですみやかな司令の移行を行うためには、「司令構造」は十分に機敏であるべきだと宣言した。「挑発」?ロシアと一応の停戦状態を維持しているウクライナはNATOには加盟していないが、大統領のペトロ・ポロシェンコが、ポーランドの首都(ワルシャワ)に招待されている。

彼は米大統領が、ロシアの侵略に対して主権と領土保全を守るために、ウクライナの取り組みを強力にサポートすることを思い出したのだろう。つまり、ロシアがミンスク契約に基づく義務を完全に遵守しない限り、モスクワに対する欧米の制裁が維持されるだろう。 こうして、ワシントンとその同盟国が、ミンスク契約に対する違反同様に、モスクワによるクリミアの併合で、ウクライナの演習の役割を曖昧にし続けるのだ。

セルジュ・アリミ 2016年8月

一般的にミンスク契約とはベロヴェーシ合意のこと。

1991年12月8日、この会議に参加した3国(ロシア・ウクライナ・ベラルーシ)がソビエト連邦から離脱したのがソ連崩壊でした。

そして、新たに同地域において、ヨーロッパ共同体(EC)をモデルとした緩やかな国家の共同体として、独立国家共同体(CIS)の創設が合意されました。

ミンスク契約にはこのような歴史的背景がありますが、この記事では、2015年2月に行われたミンクスサミットのことを指します。

ウクライナ、ロシア、フランス、そしてドイツの指導者たちが、ウクライナのドンバス地域で起こっている継続的な紛争を緩和するためのプログラムに合意したのです。

欧州とロシアの両国間の緊張を維持する必要があるのはなぜか? 

それはワシントンが、両国間の緊張のおかげで彼ら(欧州とロシア)の間に生じ得るいかなる和解をも防止できるからだ。そして彼らの最も従順な同盟国イギリスは、« Brexit »(欧州離脱)以降も旧大陸の軍隊の運命と結びつき、欧州と密接なままでいることが確実になる。ちょうど軍事予算を増加したばかりのベルリン側は、「ロシアは近い将来、進路を変更することなく、大陸の安全保障へのチャレンジを代表するようになるだろう」と考えている。NATOはそのような方程式を採用する可能性が高い…。

セルジュ・アリミ 2016年8月

つまり、イギリスの欧州離脱が決定しても、軍事的にはイギリスは欧州の同盟国であり、米国は欧州とロシアが和解して一致団結することを恐れています。

それを防ぐために、米国とカナダが欧州に割って入り、ロシア・欧州間の緊張を維持しようとしているのではないかというのが、この記事を書いたセルジュ・アリミ氏の見解です。

NATOが意図的に分裂状態をつくっているというのです。

ところが、大西洋同盟のドラムビートは別のファンファ-レによりかき消された。バラク・オバマは、ダラスの警察官殺害事件後に、ヨーロッパでの滞在を短縮しなければならなくなった。そして、二-スで大虐殺が起こる数時間前、フランソワ・オランドは7月14日の演説中に、自分の美容師の給料について語ったが、ロシア国境に展開する派兵に、フランスが貢献することを約束したワルシャワ・サミットについては、言及しなかったのである。

セルジュ・アリミ 2016年8月

オランド大統領のスキャンダル【カナール・アンシェネ】

ここで出てきたのがオランド大統領の少し変わったスキャンダル。

7月13日、二-スでの“テロ”が起こる前日にフランスのカナール・アンシェネ紙が、オランド大統領が理髪師に毎月約1万ユーロ(約115万円)の給料を支払っているという記事を出しました。

カナール・アンシェネ紙は、フランスのインディペンデントな週刊新聞。

日本のメディアにはよく週刊誌であると書かれていますが、雑誌ではなく週刊で発行される新聞です。

同じく、シャㇽ-リ-・エブドを週刊誌と書いているメディアがありますが、彼らもまた、インディペンデントなウィ-クリ-新聞です。

さて、カナール・アンシェネ紙が、オランド氏の美容師「オリビエ・B」氏の契約書を紙上で公開したことで、国民からは公費の無駄遣いだという怒りの声が上がりました。

毎月約1万ユーロ(約115万円)の理髪代という金銭感覚は到底理解できず、国民が怒るのは当然のことです。

だけど、そんなに重大な問題なのでしょうか?

最後に

オランド大統領のスキャンダルや二-スでの「テロ事件」の影でNATOが着々と軍事体制を整えている時に、オランド氏もオバマ氏も「ワルシャワ会議での決定」について一言も触れていません。

今後、フランスや米国が貢献することになる東欧の多国籍部隊への派兵は、月々1万ユーロでは済まないはずですが、オランド氏の美容師のお給料に関心が集まってしまうのは、なんとも皮肉なことです。

今日も、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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