【フランスの階級闘争と黄色いベスト】マクロンと臨時ボーナス

Le siege de Paris 1870 Ernest Messonier├ ★ルモンド・ディプロマティック
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黄色いベストが政府と政治家を相手取ったフランスの階級闘争では、本来なら活発な政治活動から切り離されていたはずの労働者階級に、この冬、フランスのエリートたちが譲歩を見せました。黄色いベストの継続的な人気は、彼らがフランスの政治を再編していることを示唆しています。

Le siege de Paris 1870 Ernest Messonier
Le siege de Paris 1870 Ernest Messonier
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政治的・社会的再編成 – フランスの階級闘争 

フランス国家元首は「全国大討論」を始めて「黄色いベスト」運動に応じた。この種の運動は、社会的対立が根本的な敵対行為ではなく、むしろ権力と敵対者間のコミュニケーション問題であると仮定する。危ない仮説である…。 

Serge Halimi & Pierre Rimbert 

選挙に敗れたり、「改革」に失敗したり、自分の株が暴落したりするのを恐れているのではなく、暴動や反乱、そして免職により権力を失うことを恐れているのだ。フランスのエリートたちは、半世紀の間そのような恐れを感じた事はなかった。しかし、2018年12月1日の街頭抗議は、突然人々の心を凍りつかせた。

※le chef de l’État 国家元首 国家主席 フランス国主席 (Chef de l’État francais)
※un grand débat national 全国大討論 

 「緊急なのは、人々が家に帰ることです」と、BFM TVのスター記者ルース・エルクリーフ氏は慌てふためいた。番組の画面には、よりよい生活をつかみ取ろうと決意した「黄色いベスト」たちの映像が映されている。数日後、日刊紙ロピニオンのジャーナリストは、嵐の激しさをテレビで明らかにした。

 『主要グループ企業の全てが、ボーナスを支払う予定です。彼らは槍玉に挙げられるのを本当に恐れています。ええ、あの酷い土曜日(12月1日)には荒廃の全てがありました、そして大企業はメデフ(フランス経団連)のトップ、ジェフロイ・ルー・ド・ベジューに呼びかけました。「すべてを手放しなさい ! さもなければ……」彼らは身体的な脅威を感じています。』

またジャーナリストの隣では、調査機関のディレクターが「大企業の経営者達が非常に心配」であり、このような雰囲気は「1936年と1968年について読んだ同様の出来事を思い起こさせる」と述べた。 

人民戦線の時、労働総同盟(CGT)の書記長ブノア・フラションは、フランスの首相官邸マティニョンでの交渉中、次のように述べている。「最も重要なものを失うよりむしろ、大金を手放す事を知らなければならない。」工場の占拠と予期せぬストライキが発生した後で、オーナーたちが「すべての点で譲歩した」ことさえあったのを思い出させた。

 有産階級がこのように屈服することはまれだが、歴史を通じて得た教訓による当然の結果だ。恐怖を感じた者たちは、彼らを怖がらせた者たちのことも、それを目撃した者たちのことも許さない。 

※classe possédante 有産階級 

Isidore Pils,  La colonne vandome renversee, 29 mai 1871 
Isidore Pils,  La colonne vandome renversee, 29 mai 1871 

持続的で忍耐強く、つかみどころがなく、またリーダーがおらず、政界やメディアが理解できない言葉を話す。警察による抑圧や大規模な抗議の日に行われた敵対的なメディア報道にもかかわらず、人気を維持し続ける彼ら、黄色いベスト運動は先人たちの様々な反応を思い起こさせる。 

社会集団が結晶化し、あからさまな階級闘争があった時代には、誰もが自分の立場を選ぶ必要がある。センターグラウンドが消滅し、最も自由主義的で、文化的で優秀な人々でさえ、共存して生きるという体裁を忘れてしまう。 

※choisir son camp 立場を選ぶ 

Théophile-Alexandre Steinlen, La Commune, Louise Michel sur les barricades, 1885 

彼らは恐怖にとらわれて、1848年6月の『回想録』の著者アレクシ・ド・トクヴィルのように落ち着きを失った。かつて極度の貧困に陥ったパリの労働者たちは、権力を持つブルジョアが「世紀の問題を解決することができるのは大砲だけである」と信じて派遣した軍隊に虐殺された。 

※perdre leur sang-froid 上がる 動じる かっとなる 落ち着きを失う

トクヴィルはマナーを忘れ、社会主義指導者オーギュスト・ブランキ (Auguste Blanqui)のことを「病的で、厄介で、青白く、かび臭い死体のように汚い姿をしている。下水道から抜け出したかのようなその姿は、しっぽをつままれたヘビを思わせた。」と描写した。

1871年のパリ・コミューンの時にも、激しい怒りにより知識人や芸術家たちが同様の変貌を見せたが、その何人かは進歩主義者だった。詩人ルコント・ド・リール (Leconte de Lisle) は、「下層階級のすべてのリーグ、すべての役立たず、すべての嫉妬や殺人者や泥棒たち」に烈火のごとく怒り、作家フロベール (Gustave Flaubert) は、「人間の精神の不名誉である普通選挙に終止符を打つこと」が最初の救済につながると考えた。

2万人の死者と4万人近くの逮捕者を出し政府による”処罰”に安心したエミールゾラは、厳しく罰する事で、労働者階級に道徳がもたらされると考えた。「たった今行われた大虐殺は、彼らの熱を落ち着かせるために必要な恐ろしい現実だったのだ」と…。

Le reve,Paris incendié 1870Jean Baptistery Corot

以上、ルモンド・ディプロマティック仏語版2月号の一面から『フランスの階級闘争』の冒頭を訳してみました。今日は 

①マクロンボーナス 
②第17週目の黄色いベスト運動 

について見ていきたいと思います。 

①マクロンボーナス (Prime Macron)

◆ 74%の企業が従業員に「マクロンボーナス」を支払う

去年12月10日「黄色いベスト」運動が本格的に始まると、解決策として、エマニュエル・マクロンは企業に対し従業員に特別賞与を支払うよう訴えかけました。それから2か月後、企業の74%が大統領の訴えに好意的に答え、従業員全員、または一部に臨時ボーナスを支払うことにしました。 

◆特に寛大なのは中小企業 

今日、「黄色いベスト」運動に起因する経済的損害はかなりのものになりましたが、経済紙「Les Echos」が発表した調査によると、従業員に臨時ボーナスを支払う会社のうち最も寛大なのは中小企業。 

中小企業に焦点を当てたこの調査によると、共和国大統領の呼びかけに答えたのは主要グループ企業だけではありませんでした。中小企業のいくつかは平均値を上回るボーナスを約束しています。 

平均して、企業は従業員1人あたり532ユーロの特別ボーナスを支払うことになり、中でも最も寛大なのは、従業員50人以下の会社で、平均687ユーロ。従業員数300人から1,000人未満の場合は平均約467ユーロ、そして、1,000人以上の従業員を抱える企業の場合、平均約583ユーロが支払われます。 

◆大規模小売業はボーナスを制限 

大規模なグループ企業が、必ずしも寛大というわけではなく、支払われる金額は、企業の経済状況と関連分野によっても大きく異なります。たとえば、「黄色いベスト」のせいで多くの被害を受けた小売業者(スーパー等)は、それほど多くのボーナスを支払っていません。カルフールやAuchanでは200ユーロです。その一方で、Total (国際石油資本)は全従業員に1,500ユーロの特別ボーナスを支払いました。 

不満を和らげることを目的とした今回の臨時ボーナスの支出総額は、合計で110億ユーロを超えるとみられています。 

②第17週目の黄色いベスト運動

◆ 3月9日第17回「黄色いベスト」の動員数は運動開始以来過去最低を記録

3月9日土曜日夕方パリのシャンゼリゼ通り

内務省によると、今週の土曜日、フランスで約28,600人、パリで3000人の「黄色いベスト」がデモを行いました。黄色いベストの大きな課題に政治的解決策をもたらすべく、マクロン大統領が始めた大討論会の終わりまで後1週間という所で、運動開始以来最低の動員数となりました。 

先週土曜日の第16週目には、パリで4000人、フランス全土で39,300人のデモ隊が特定されています。

3月9日土曜日夕方のパリ・シャンゼリゼ通り

今回は、パリを始めとする一部の地域がバカンスだったこともあってか、デモ参加者数の大幅な減少がみられました。この3月までに約74%の企業が通称「マクロンボーナス」を支払っていることから、一時的に抗議者の怒りが収まった状態かもしれません。 

 3月9日土曜日夕方のパリ・シャンゼリゼ通り

夕方、デモ終了後の現場に行ってみた感想としては、今回特に「マクロンボーナス」の恩恵を受けていない可能性が高い高齢者や若年層の姿が目立ちました。(写真にはあまり写っていませんが)中でも元気な高齢者女性たちの存在が目立っていたように思います。

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