7月14日の革命記念日をすぎて、バカンスシーズンに突入したパリは、ここのところ熱くなったり寒くなったりを繰り返しています。
ちなみに、今現在のパリの気温は18度で、肌寒いと感じるくらい。
今週は、平均気温23度くらいの日が続くようですね。
そんなパリから、本日はルモンド・ディプロマティック仏語版7月号の一面記事から「湾岸のいかさま戦争」をご紹介します。
湾岸のいかさま戦争

▲中東を代表するコンセプチュアル・アーティスト、ファイサル・サムラの作品。2012年森美術館「アラブ・エクスプレス展」 で展示。
苛立つサウジの野望と虚偽のプレスリリース
サウジアラビアとイランの伝統的な地政学的対立は、シリアとイエメンの間接的衝突を背景に、好戦的な局面を迎えている。
サウジは「影響力の高い圧力グループ」をもつ米国を通じて、アラブ近隣諸国に活動指針を示すつもりである。
また、カタールのように統制に従わないすべての国を警戒している。
サウジのカタールに対する攻撃的外交姿勢は、湾岸地域のボスが誰であるかを認識させ、近隣諸国に対する優勢を示している。

バーレーンとエジプトと一時的な便宜協定を結んでいるサウジアラビアとアラブ首長国連邦 (UAE) は、6月5日、カタールが「テロ支援」をし、イラン側について湾岸地域の安定を阻害しようとしたとして公式にカタールを告発。
UAEは、「カタールの首都ドーハとの断交」を発表した。
それにより、サウジとアラブ首長国連邦(UAE)は、カタール半島の航空・海洋域、食品を含むカタールの基本的物資の90% が経由する「地上唯一の国境を閉鎖」した。
カタールの主権を無視したサウジらの要求リストは、一連の通告を通して増え続けている。
そのリストには
- 放送局アルジャジーラとトルコ軍基地の閉鎖
- ムスリム同胞団、ヒズボラと聖戦グループとの関係破壊
が含まれている。
5月23日、カタールの報道機関は「ドナルド・トランプがリヤド公式訪問 (5月20-21日) をした際に、イラン、パレスチナのハマスやレバノンのヒズボラに対し、好戦的な発言をしたとして非難」するプレスリリースを発表。
危機はその日以来くすぶっている。
ところが24日、それが「虚偽のプレスリリース」であることが分かった。カタールの首都ドーハの報道機関がハッキングされたのだ。
しかし、混乱を収束させるには既に遅すぎた。
ファティア・ダジ=エニ
湾岸のいかさま戦争【要約】

ざっくりまとめると、
- アラブ地域における支配国をめぐりサウジアラビアが台頭。
- ドナルド・トランプがサウジの首都・リャドを公式訪問したきっかけで、サウジがカタールに喧嘩をふっかける。
- サウジとカタールは、長い間緊張したライバル関係にある。
問題①
なぜサウジは突然カタールに対して、外交と PR戦略を駆使して湾岸地域(アラブ首長国連邦「UAE」、バーレーン、エジプト)をリードしはじめたのでしょうか?
トランプ大統領の力添えで気が大きくなったのか、それともトランプに何か入れ知恵でもされたのでしょうか、気になりますね。
湾岸地域のトレンド

- サウジアラビア (とその同盟国) とカタール間の亀裂。
- ムハンマド・ビン・サルマン (通称「MBS」) が、6月21日、サウジアラビアの新皇太子として異例の昇格。
問題②
ムハンマド・ビン・サルマン (MBS)の皇太子への昇格は、さらに二国間の緊張を悪化させるのではないかと言われています。
【Drôle de guerre】いかさま戦争とは【仏語表現】

記事の原文タイトル【Drôle de guerre dans le Golfe】を直訳すると、“湾岸で面白い戦争”となりますが、「Drôle de guerre」はフランス語表現で「いかさま戦争」または「奇妙な戦争」を意味し、英語では「Phony war」(まやかし戦争)と訳されます。
「Drôle de guerre」(いかさま戦争)の語源は、第二次世界大戦初期における西部戦線に由来。
戦争状態だった「ドイツ」対「フランス・イギリス」は、1940年5月のドイツ軍によるフランス侵攻まで、地上での戦闘がほとんど行われなかったために使われた表現です。
最後に

いかがでしたか?
トランプ大統領が動くたびに、あちこちで、人々を困らせているように見えるのですが、地上での戦闘がほとんど行われないのであれぼ、それに越したことはありません。
とはいえ、中東にはまだまだ問題が山積みのようです。
ということで、本日は以上になります。